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眼腫瘍外来 

 
 
 眼科領域の腫瘍は比較的稀な疾患です。悪性腫瘍でも、治療法が確立していないことが多く、いわゆる標準的治療が変遷しています。生命の問題に加え、決して軽視できないのは、視機能維持の問題、また、美容の問題であり、それぞれの症例に応じて治療法を決定していくこととなります。勿論、診断、治療に際して、他科との連携が密接な分野でもあります。当金沢大学病院は、都道府県がん拠点病院としての国の指定うけており、当科でも、眼部の腫瘍症例を治療しています。
 以下、代表的な疾患を列挙します。


●網膜芽細胞腫
小児の代表的な眼内悪性腫瘍です。もちろん生命を脅かす腫瘍であるので、片眼の眼球摘出は重要な治療選択肢のひとつです。しかし、最近では、可能な限り眼球を温存するという考えが主流です。眼球温存療法には、レーザー温熱療法、放射照射、眼動脈内抗がん剤局所投与などがありますが、中には日本では一つの施設(国立がんセンター)でしかできない治療もあるので、必要に応じて連携を行っています。本疾患のトピックとしては、1999年、コソボ紛争時、現地で片眼摘出後に治療が中断された網膜芽細胞腫のコソボの男児を、AMDAの支援により、当院が受け入れました(写真上)。小児科との連携により、化学療法+レーザー治療を行い、残っていた眼を温存することができました。2008年12月には、9年ぶりに義眼の新調のために来日を果たし、腫瘍の再発のないことも確認できました。
 
●ぶどう膜悪性黒色腫(眼内メラノーマ)
成人の代表的な眼内悪性腫瘍です。やはり、可能な限り眼球を温存する治療法が最近のトピックです。容易に生検できる腫瘍ではないので、眼球温存療法や眼球摘出(写真:右眼内メラノーマを眼球ごと摘出)を行うべきかどうかを判断するには、臨床診断がきわめて重要になります。とくに、眼底に黒色の色素病変をみるとき、良性の母斑や黒色細胞腫などとの鑑別が困難な症例があります。全身転移しやすいがんであり、眼局所治療後の検査、治療も重要です。
 
●眼内悪性リンパ腫
社会の高齢化に伴って、症例数が増えている疾患です。組織型の殆どは、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)ですが、中枢神経DLBCLに属するため、しばしば頭蓋内に併発し、その場合生命予後は一般に不良です。眼に初発する場合には、しばしば原因不明のぶどう膜炎として治療されている場合があり、仮面症候群とも呼ばれる所以です。最近では積極的に硝子体手術を行うことにより、診断技術も向上しました。治療は、全身化学療法と放射線治療が原則ですが、これに眼局所の化学療法(メトトレキセート眼内注射など)を併用します。(写真は本疾患の眼底写真)
 
●眼付属器リンパ増殖疾患
リンパ腫(悪性腫瘍で、いわば、リンパ球のがん)は、国内外のいろいろな統計によると、眼窩腫瘍のなかで最も多いとされています。過去約10年間に当科で病理診断された約100症例の眼付属器リンパ増殖疾患の内訳の約4割は低悪性度のMALTリンパ腫、また約4割は反応性リンパ過形成(良性)で、これらの病理標本での鑑別はときに困難で、遺伝子検査が必要です。悪性度のより高い眼付属器のびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)の場合にはしばしば失明し(写真は左眼失明症例)、生命をも脅かすので、早期診断、早期治療が望まれます。
 
●IgG4関連涙腺炎、IgG4関連眼窩炎症
IgG4関連疾患とは、血清IgG4が上昇し、硬化性のリンパ形質細胞浸潤病変を呈する疾患概念であり、近年注目されています。その草分けとなったのは、2001年の信州大学Hamanoらによる自己免疫膵炎とIgG4との関連の発見でした。以降、本邦を中心にIgG4関連疾患の報告が相次ぎました。
 
眼科領域では、IgG4関連Mikulicz病が代表的な疾患です。そのIgG4関連慢性硬化性涙腺炎では、線維性硬化を伴うIgG4陽性形質細胞浸潤がみられます(図上CT、図下IgG4染色:Takahira et al. Arch Ophthalmol 125:1577-, 2007 から引用)。IgG4陽性病変は涙腺以外の眼窩組織にもみられます。IgG4関連眼窩病変においては、リンパ腫との鑑別、またその関連は重要です。また、IgG4関連疾患では全身に病変がみられることがあり、とくに血清IgG4値が高い症例では注意を要します。
 
●小児・若年者の眼瞼・眼窩腫瘍
眼窩デルモイドは、先天性に小児の眉毛下外側に好発する良性の嚢胞病変で手術対象となることの多い疾患です(写真)。手術時期には議論がありますが、眼窩骨が圧迫により菲薄化したり、破裂して強い炎症をおこしたりする可能性があるので、現在当院では、1歳以上であれば、早晩の摘出手術を勧めています。小児の眼瞼が腫脹する疾患で最も頻度が多いのは霰粒腫ですが、かなり稀には、横紋筋肉腫やランゲルハンス組織球症などの悪性腫瘍が発症するので注意が必要です。
 
●眼瞼の良性腫瘍
眼瞼の良性腫瘍には、尋常性疣贅(いぼ)(写真上)母斑(ほくろ)(写真中央)、乳頭腫(写真下)などがあり、いずれも整容上あるいは機能上の問題があれば、手術の適応となります。手術では、ほとんどの例で単純切除で対応できます。
 
●眼瞼の悪性腫瘍
眼瞼癌には、代表的な3つ、すなわち基底細胞癌(写真上)、扁平上皮癌、脂腺癌(写真下)があり、後者ほど、悪性度は高くなります。脂腺癌はしばしば霰粒腫(ものもらい)との鑑別が困難で注意が必要です。治療は手術療法が主体となり、当院では基底細胞癌では2〜3mm、脂腺癌では5mmのセーフティマージン(健常部)をとって切除しています。瞼が大きく欠損することが多いので、瞼の再建が必要となります。当院では、皮膚(前葉)の再建には周囲の皮弁を、粘膜(後葉)の再建には硬口蓋粘膜移植あるいは保存強膜移植(下写真)を主に行っています。
 
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