新任挨拶
教授・診療科長 東出 朋巳

眼科学は眼とその周囲組織の疾患や病態に対する診断と治療に特化した専門領域です。急速に進化し変貌する今日の情報化社会では、良好な視覚を守ることは快適な日常生活を維持する上で不可欠であり、眼科医の果たす役割は以前にも増して大きくなっています。
私は、金沢大学附属病院において過去20年以上にわたって緑内障と網膜硝子体疾患の診療に携わり、多数の手術を執刀してきました。緑内障は我が国における成人中途失明原因の4割を占める重大な疾患であり、高眼圧などによって視神経の進行性不可逆性の変性を来します。視神経症の進行を抑制するために眼圧下降のための薬物治療や手術治療を行います。網膜硝子体疾患では、網膜剥離や増殖糖尿病網膜症など失明に直結する疾患の手術治療を行います。2つの専門領域ともに最新の診断機器と手術治療を取り入れ、県内外からの多数の紹介患者の治療に当たってきました。
研究では入局3年目からの米国マイアミ大学留学時にGeorge Inana教授から分子遺伝学を学び、新規の網膜特異的遺伝子のクローニングに成功しました。さらに、河﨑一夫名誉教授のもとで網膜電気生理学や網膜疾患の研究を行い、杉山和久名誉教授のもとでは緑内障と網膜疾患の臨床および基礎研究に従事いたしました。また、学内外の多数の共同研究に参画させていただきました。
私のmissionは、確かな臨床力を基盤として未解決の臨床課題を独自の研究アプローチで解決することです。この度、伝統ある金沢大学眼科学教室を主宰する機会を与えられました。つきましては、眼科6領域(角結膜,緑内障,白内障,網膜硝子体・ぶどう膜,屈折矯正・弱視・斜視,神経眼科・眼窩・眼付属器)すべてにおいて、このmissionを達成すべく教育・研究・臨床それぞれにおいて教室員とともに尽力し、よりよい視機能の獲得と維持によって社会貢献を果たしていく所存です。従来にも増してご指導とご支援を賜りますようお願い申し上げます。