学会報告
第72回日本臨床眼科学会における特別講演
臨眼2018の特別講演を終えて〜感謝の気持ちで一杯
杉山 和久
会長の山本修一教授(千葉大学眼科)から臨眼の特別講演を依頼されたのは、講演の1年前の2017年8月でした。大変光栄なことであり、喜んでお引き受け致しました。どのような講演をするか大変に悩みましたが、その時頭をよぎったのが金沢大学眼科学教室の礎を築かれた高安右人教授です。今から約110年前の1908年の日眼総会で「奇異なる網膜中心血管の変化の1例」を報告され、これが「高安病」と呼ばれる眼を含めた全身疾患の発見の発端となりました。我々が高安病から学んだことは、網膜・脈絡膜の虚血に対する網膜血管の反応形式、病態生理をどう理解するかという、現代でも通用する問題です。そして、症例を丹念に観察し記載するという、臨床医学の原点でした。翻って、1例1例の症例から学ぶことの大切さは現在でも不変であると思います。日常の緑内障診療の現場は、緑内障を勉強する最良の教室であり、患者さんは多くのことを我々に教えてくれる先生です。私がこの30年以上のわたる臨床経験から、緑内障症例から何を学び、研究をして、その結果何を解明できたかを提示することにより、症例から学び研究する「緑内障学」即ち、学問としての緑内障への扉を開き、サイエンスの目をもって緑内障診療をする楽しさと研究の方法論を伝えたいと思いました。そこで選んだテーマが、1.自分が長年研究してきた乳頭出血の臨床的意義について、2.眼圧日内変動のメカニズムとコンタクトレンズセンサーによる新しい検査による最高眼圧値の予測ついて、3.トラべクレクトミーは眼圧を下げるだけでなく眼血流を増加させること、濾過胞感染などの合併症克服への道のり、4.術後中心視野障害など苦い症例を経験した後期緑内障眼への硝子体手術は要注意の4つでした。これらのことは、毎日の約1時間の早朝散歩の時に、兼六園、金沢城を歩きながら、頭の中で構想を練りました。