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沿革

 明治初年の頃の金沢医学館、金沢医学所および金沢医学校時代では眼科専任の教官はなく、眼科学を講じた者には、スロイス、ホルトルマン、ローレッツ、田中信吾、中西要、佐藤廉などがある。明治17年に石川県甲種医学校が設立され、同年6月に一等教諭医学士山崎兵四郎が眼科長に就任した時に初めて眼科が独立した。当時眼科は四大学科の一つとして考えられていたが、本校も内科、外科につぎ眼科をいちはやく独立した科として持ったのである。
 山崎兵四郎は明治20年9月に海軍軍医として学校を去り、明治21年4月から高安右人が着任し、以後眼科医長として大正13年までの36年間の長きにわたり眼科を主宰した。高安が赴任するまでの間は有松戒三が眼科医長を3ヶ月務めた。明治32年7月から34年7月までの2年間、高安右人はドイツに留学したので、この間は第二内科部長佐々木逵が眼科長を兼任した。
 明治27年9月第四高等中学校は第四高等学校と改められ、さらに明治34年4月に第四高等学校医学部は金沢医学専門学校として独立し、大正12年4月には旧制金沢医科大学に昇格した。この間、眼科部長は引き続いて高安右人が担当し、金沢医科大学専門学校長、金沢医科大学長を歴任した。
 大正13年に退官した高安右人に代って眼科副部長山田邦彦が眼科部長に昇任したが、昭和2年急逝し、愛知医科大学(名古屋大学医学部の前身)助教授中島實が眼科学教授に就任した。
 中島實は昭和15年4月に名古屋帝国大学教授に転任したので、助教授倉知與志が教室を主宰することになり、昭和 17年10月に教授に昇任し、さらに戦後には教室員も増え業績があがり、また附属病院長、医学部長を歴任した。
 倉知與志教授が昭和46年3月停年退官した後、助教授米村大蔵が昭和46年7月に教授に昇任した。米村大蔵教授は附属病院長も勤め、第11回日本眼光学学会会長および第92回日本眼科学会会長を務め、昭和63年3月停年退官し、名誉教授となる。
 米村大蔵教授退官後、河崎一夫助教授が昭和63年6月に教授に昇任し、平成6年第42回日本臨床視覚電気生理学会会長、平成10年第102回日本眼科学会宿題報告を担当した。平成12年4月から附属病院長を2年務め、その間の平成13年第67回日本中部眼科学会会長を務め、平成14年3月停年退官し名誉教授となった。
 平成14年12月に、昭和59年金沢大学医学部卒業の杉山和久が岐阜大学眼科助教授を経て第 9代教授に就任した。平成22年4月から附属病院副病院長、令和2年4月から令和6年3月まで金沢大学医薬保健学域医学系長・医学類長を務めた。平成23年の第115回日本眼科学会総会評議員指名講演(旧宿題報告)の演者に指名され、令和30年の日本臨床眼科学会で特別講演を行った。また、平成24年9月に日本緑内障学会(金沢市)、平成30年5月に国際視野画像学会(金沢市)、令和2年10月に日本臨床眼科学会(Web開催)、令和3年11月に日本眼薬理学会(金沢市)と数々の全国学会を主催した。令和6年3月に定年退官し、名誉教授となった。
 

現在の活動

緑内障

基礎研究:①SLO、OCTを用いたラット網膜神経節細胞、網膜神経線維層の生体観察と計測法の確立、②マウスを用いた時計遺伝子と眼圧日内変動メカニズムの解明、③新たな濾過手術法の確立―企業との産学連携による色素含有ハニカム構造フィルムの研究。
臨床研究:①眼圧日内変動と交感神経受容体遺伝子多型の関連、②緑内障薬物治療のテーラーメード医療化、③最新の緑内障検査機器を用いた緑内障検診システムの確立、④新しい眼底像視野計の開発、⑤スペクトラルドメインOCTなどを用いた緑内障における構造と機能の関係解析、⑥抗VEGF抗体による血管新生緑内障の治療成績の改善効果、⑦視神経乳頭出血と緑内障性視神経症の研究。
診療:杉山和久がチーフとなり平成15年1月からスタートした緑内障外来は、病診連携に基づいた緑内障管理を重視して北陸3県にネットワークを構築し、緑内障手術症例は飛躍的に増加した。また、杉山和久は、緑内障のなかでも最も有病率が高い正常眼圧緑内障を得意とし、早期発見と適切な管理を目指した理想的な緑内障診断・管理システムの確立にも取り組んでいる。
成果:緑内障分野の最高名誉賞の須田賞を平成19年に東出朋巳、平成22年に大久保真司が受賞。今井記念緑内障研究助成基金は平成15年に東出朋巳、平成20年大久保真司、平成21年武田久、平成22年齋藤代志明が選ばれた。杉山和久、東出朋巳、奥田徹彦が色素含有ハニカム構造フィルムは緑内障濾過手術への応用で特許を取得。杉山和久が平成24年9月に第23回日本緑内障学会、平成28年5月に第4回日本視野学会、平成30年5月に国際視野画像学会(IPS)、令和元年10月に第74回日本臨床眼科学会、令和3年11月に日本眼薬理学会を杉山和久が会長として主催した。
 

角膜

研究:①角膜内皮移植後の眼圧値に関する研究、②小林が角膜ボーマン層に特異な構造を発見し、K-structureと命名した、③レーザー共焦点顕微鏡を用いた眼表面疾患の解析、④角膜内皮移植に関する臨床研究、⑤遺伝性角膜ジストロフィの遺伝子解析とレーザー共焦点顕微鏡を用いた生体組織解析。診療:年間約60件のペースで角膜移植を行っている。全国に先駆けて角膜内皮移植の導入に成功し、全国各地から角膜専門の眼科医が金沢大学に手術見学に訪れる。また、先進医療に承認された羊膜移植術も200例を超える。成果:平成20年に小林顕が平成19年度日本眼科学会学術奨励賞および角膜学会学術奨励賞を受賞、平成21年に小林顕が、第32回日本眼科手術学会総会にて第4回Ophthalmic Surgery Film Awardグランプリ受賞。同年角膜カンファランスにて横川英明が、真鍋賞を受賞。平成22年に小林顕が金沢大学十全医学賞を受賞。令和4年2月に角膜カンファランス2022を小林顕が会長として主催した。
 

網膜硝子体

研究:①シリコンを素材としたカニューラを使用した20ゲージ硝子体手術に関する研究、②強度近視黄斑円孔網膜剥離治療の改良に関する研究、③シャンデリアホールダーの開発、④企業との産学連携によるトロカール・カニューラシステムの研究。診療:小切開創による経結膜硝子体手術の導入により、手術時間の短縮、術後の疼痛の軽減、入院期間の短縮を実現した。成果:西村彰は企業との産学連携研究によって、トロカール・カニューラシステムの特許を取得した。
 

眼腫瘍・眼窩形成疾患

研究:眼領域リンパ増殖疾患とIgG4の研究。診療:結膜原発MALTリンパ腫では、放射線照射を極力避けるべく、血液内科との連携のもと抗CD20抗体療法(リツキシマブ)を治療の選択肢として考え実施している。2006-2009年の内に実施した涙腺生検22症例のうち9症例は高IgG4血症をともなう IgG4関連涙腺炎で、頻度の比較的高い疾患であることが判明した。
成果: 2009年11月に第24回日本眼窩疾患シンポジウム、2018年11月に日本眼腫瘍学会を高比良雅之が会長として主催した。
 

小児眼科・斜視

診療:平成18年に斜視小児外来を設立した。小児眼科診療では、児の視覚発達障害になりうる原因を迅速に調べた上、一人ひとりに最適な治療計画をたて、保護者とともに早期治療を進めている。斜視診療は、乳児から成人まで最新の国際的標準と認められた方針に従い治療している。病診連携により多くの患者の紹介があり、年間約200件の斜視手術を施行。成果:平成22年7月に第35回日本小児眼科学会総会、平成29年6月に第73回日本弱視斜視学会総会を杉山能子が会長として主催した。
 

神経眼科

神経眼科外来では様々な疾患を従来からの機器に加えて、最新機器を用いて診断評価を行っている。ボツリヌス療法やミトコンドリア遺伝子診断などにも対応している。
 

ぶどう膜疾患

研究:網膜静脈分枝閉塞症に続発した黄斑浮腫に対するベバシズマブ硝子体内投与の有用性の研究。診療:他診療科との連携をとり、診断および全身加療のプランも決定している。症例の重篤度によって局所療法、ステロイド・免疫抑制剤の全身投与、場合により手術加療も行っている。