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緑内障

 

緑内障グループに入り多くの患者さんを救おう!

 緑内障は、40歳以上の日本人での有病率が約5%にものぼるcommon diseaseであり、日本での失明原因第一位となっている慢性進行性疾患です。
緑 内障は、広い意味では、数ある視神経変性疾患のひとつといえますが、他の視神経症と比べて頻度が圧倒的に多いにもかかわらず、進行様式や構造・機能という観点からはかなり特異的ともいえる面があり、実に不思議な疾患だと思います。先人たちの知恵と近年の眼底イメージング技術の発達、世界中の研究者の日々の努力により、少しずつ疾患の本質に近づきつつあるもの、根本的な原因はいまだ未解明です。
 まだまだブラックボックスな要素が多く、私たち眼科医に様々な謎を突き付けてくる疾患ですが、その分、研究分野は多様でやりがいがあります。是非我々とともに眼科最大のフロンティアともいえる緑内障にチャレンジし、多くの緑内障患者さんを救いましょう。
 

研究のススメ

 研究というと大変、面倒くさい、時間がとられるなどと漠然なネガティブイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。確かに入局したての若いときは、もっと臨床の知識をつけたい、手術がはやく上手くなりたい、など焦ってしまうのも無理はないと思います。しかし、研究の魅力はなんといってもやはり現代の医学でも解明されていない疑問・問題点を自分で解決することができることではないかと思います。たとえば、緑内障という病気を一つとっても、診断や治療などわかっていないこと、改善すべき点が無数にあります。正直に現在の緑内障診療はまだまだ改善の余地が大きい分野であると思います。この無数にある問題を自分の手で解決することで、眼科診療をより良いものにし、医学の発展に貢献できるということは、医師としてこれ以上の喜びはないのではないでしょうか。
 焦らなくても、長い目で見ればしっかりとした努力さえすれば誰でも疾患を診断・治療することはできるし、手術もできるようになります。むしろなんらかの手術ができる、という観点でみるとほぼすべての眼科医が手術はできるようになるのではないかと思います。しかし、それと同時に研究を続けられる医師はその中でごくごくわずかです。そしてこれは個人的な意見ですが、研究をしてきた医師は、疾患に対する理解もより深くなり、ミクロ的視点、マクロ的視点から疾患を捉えることができると感じています。研究に興味がある、研究したい!という方々には希望があれば米国などへの留学も可能です。最近は留学というとハードルが高く、敬遠されがちですが、留学して後悔している人は私の知る限り一人もいません。私はワシントン州シアトルのUniversity of Washinton (UW)に1年半ほど留学し、主に眼圧日内変動関連の研究を行いましたが、その研究は帰国した今でも続けていますし、この留学で得た知識と経験は他では決して身につくことのなかったものだと思っています。冗談ではなく機会があればもう一度渡米したいぐらいです。これを読んでいる将来有望な医学生・研修医の先生も、ぜひチャンスがあれば日本という国を飛び出して、まったく違う環境で研究に打ち込んでほしいと思います。将来的には、臨床でもバリバリ仕事をこなしながら、研究を継続し、新たな発見をし、世界に向けて発信をする、そんな眼科医を目指してみるのも良いのでは?
 当院の緑内障研究班では基礎研究、臨床研究も数多く行っており、本人の希望に応じてどちらか、あるいは両方の研究に従事することも可能です。研究内容の詳細は他項に譲りますが、もちろん自分のアイデアで研究を新たに始めることも可能です。一人でも多くの意欲ある医師が当教室に入局し、活気ある教室でともに切磋琢磨できることを楽しみにしています。ぜひ興味がある方は一度教室に遊びに来て下さい。
 

緑内障手術とMPCPC

・緑内障手術は色々な種類がありますが当院では2004年度から2018年度にかけて4404件の緑内障手術を行ってきています。2018年度の緑内障手術の成績は511件と年々増えています。
・緑内障手術は、従来の濾過手術、濾過手術にチューブを使用するチューブシャント手術に加え、最近話題の一つとして極低侵襲緑内障手術が(Micro Invasive Glaucoma Surgery, MIGS)があります。MIGSにはdeviceを用いることがほとんどであり、deviceの開発により緑内障手術はどんどん進化しています。合併症や侵襲が少なく、わずかな手間で眼圧を下げることができる夢のようなdeviceが開発されるまで、まだまだ苦しい従来の緑内障手術も必要です。症例豊富な金沢大学眼科で多くの緑内障患者を救いましょう!
・当院ではマイクロパルス毛様体光凝固(micropulse cyclophotocoagulation : MPCPC)といった2017年度から日本で認可された新しいレーザーを2018年の2月から取り入れています。施術の容易さと合併症の少なさに加えて、眼圧を下降させる期待も高く、現在当院では眼圧を下げる手術に代わる一つの大きな方法として利用しています。日本中で注目されているレーザー治療で今後も活躍が期待されます。
 

他にも基礎から臨床までさまざまな研究を行っています。 詳しくはこちら


後期研修の到達目標

 

  1. 緑内障診断に必要な検査とその目的を理解し、原因による分類、隅角形状による分類、進行度による分類
    1. 細隙灯顕微鏡による前房深度の評価。
    2. ゴールドマン圧平眼圧計をはじめ、トノペン、アイケア、ORAによる非接触型眼圧計で眼圧測定ができる。
    3. 隅角鏡による隅角検査ができる。隅角の開大度の判断および隅角所見からの緑内障の原因を診断。
    4. 眼底検査による視神経乳頭と網膜神経線維層の評価。
    5. 視野検査として静的視野とゴールドマン視野計の使用法を理解し、眼底病変との対応。
    6. 緑内障の臨床診断に利用されている各種診断機器(ステレオ眼底写真、光干渉断層計(OCT)、視神経乳頭解析装置(HRT)、Pentacam、UBM、トリガーフィッシュなど)の原理・使用法の理解・習得。
  2. 手術前後の検査・診察、手術助手 
    1. 緑内障手術の術式手順、術中合併症を理解。
    2. 各術式(濾過手術・流出路再建術、隅角癒着解離術など)毎に術前・術後検査のポイント(前房深度、濾過胞の状態、眼圧)を理解。
    3. 術後合併症を理解し、眼球マッサージをはじめとする緑内障術後管理。
  3. レーザー治療
    1. レーザー治療の原理や適応病型を理解。
    2. 各種治療法(レーザー虹彩切開術、レーザー線維柱帯形成術、レーザー隅角形成術、毛様体光凝固術など)を指導医の監督の下で治療を行う。
  4. 急性緑内障発作に対する処置・治療
    1. 急性緑内障発作の病態生理・対処法(保存的治療、外科的治療)を理解し、診断できる。
    2. 瞳孔ブロックの解除を目的とした保存的治療をできる。
    3. レーザー虹彩切開術、手術的周辺部虹彩切除術を行なう。
  5. 緑内障治療方針の決定
    1. 症例ごとに視神経乳頭と視野障害程度ならびに無治療時眼圧から治療の目標眼圧を設定し、薬物療法を開始し、効果を判定する。(眼圧日内変動・片眼トライアルなど)
    2. 眼圧下降のための内服薬や注射薬についても薬理作用と副作用、適応や禁忌を理解。  
    3. 緑内障手術の適応と時期を判断できる。
  6. 小児の緑内障として発達緑内障やさまざまな原因による続発緑内障を適切に判断し、これらの種々の病型について固有の病態を理解し、それぞれの治療法を学ぶ