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角膜疾患外来

 

紹介初診

 水の午前(8:30〜11:00)

再 診

月・水の午前(8:30〜11:00)

 
 
 金沢大学眼科角膜専門外来は、月、水、金曜日の午前(8:30-11:00)に、小林臨床准教授、横川助教をはじめとする角膜を専門とする眼科医が、角膜および結膜に関連したあらゆる疾患を対象として診療を行っております。

①角膜移植

現在、年間に約50件のペースで角膜移植を行っており、角膜内皮機能の良好な角膜に対しては深部層状角膜移植術(Deep anterior lamellar keratoplasty)を積極的に行っております。角膜移植までの待ち時間は約1ヶ月であり、入院期間は約10日となっております。角膜疾患で悩む患者様に、最小限の待ち時間、最小限の通院(角膜移植までに約2回の通院が必要です)、最小限の苦痛で、安全確実な手術を行えるよう努力しております。
 
小林顕病院臨床准教授の角膜移植、角膜内皮移植(DSAEKDMEK)、羊膜移植に関する記事が家庭画報に掲載されました。PDFダウンロード
 
小林顕病院臨床准教授の角膜移植、角膜内皮移植(DSAEKDMEK)に関する学会セミナーPDFダウンロード
 
●入院期間と費用
(1)入院から退院までの期間は約1014日間です。
(2)角膜移植はすべて保険診療で行っています。
入院費用の自己負担は、約2530万円です(3割の場合)。
ただし70歳未満の方は、事前に高額医療の申請をしていただくと、入院費用の支払いが軽減されます(ただし、食事療養費、個室代、病衣代を除く)。健康保険証に記載してある保険者へ「限度額適用認定証」の交付申請手続きをする必要があります。「限度額認定証」は、入院時に入退院センターでご提示下さい。「限度額認定証」は、申請月からの認定となりますので、ご注意下さい。
 詳しくはこちら
 
●術後の経過観察
遠方よりおこしの患者様は、退院後13612か月に当科を受診していただき、術後検査を行いますが、その間の期間は近医眼科にて経過観察してもらいます。

《当科で角膜移植をお考えの方へ》
◎角膜移植を受けるまで

(1)かかりつけの眼科医師に当科の角膜外来宛ての紹介状を書いてもらって下さい。
(2)外来受診のご予約が必要になります。患者様自身で、予約センターにて角膜外来のご予約をお取り下さい。
予約センター:0762652933
受付時間について
来院によるお申込み:午前830分~午後430
お電話によるお申込み:午前9時~午後430
(土、日、祝祭日、年末年始、休診日を除く)
 
(3)通常、約14か月後の手術を計画します(つまり、外来受診から手術までの待機期間は約14か月ということです)。
病状に応じて局所麻酔または全身麻酔のどちらかで計画しますが、全身麻酔で計画する場合には、待機期間中に当院の内科などで全身検査を受けてもらう場合があります。
 

◎当科で行っている角膜移植の術式

全層角膜移植(Penetrating keratoplasty: PKP)
深部層状角膜移植(Deep anterior lamellar keratoplasty: DALK)
表層角膜移植(Anterior lamellar keratoplasty: ALK)
角膜内皮移植(Descemet's stripping automated endothelial eeratoplasty: DSAEK, non-Descemet's stripping automated endothelial keratoplasty: nDSAEK, Descemet membrane endothelial keratoplasty: DMEK)
角膜輪部移植(Keratolimbal allograft: KLAL)
 

(1)全層角膜移植(Penetrating keratoplasty: PKP)

 
角膜の全層(上皮~実質~内皮)を取り替える、古くから行われている術式です。角膜全層に障害が及んでいる場合や内皮細胞に障害がある場合に適応となります。角膜の中央を直径7.5mm8.0mm くらいの円状に打ち抜いて、見合ったサイズのドナー角膜を縫い付けます。手術時間は約6090分です。
 
(2)深部層状角膜移植(Deep anterior lamellar keratoplasty: DALK)、表層角膜移植(Anterior lamellar keratoplasty: ALK)

 
円錐角膜や角膜輪部デルモイドなど病変部が角膜の表層にある場合に行われ、患者様の内皮細胞を残して、角膜上皮・実質だけを取り替える手術です。手術後に拒絶反応の起こる可能性を低くするメリットがあります。DALK では、約0.5 ㎜の角膜を0.02 ㎜くらい残して削るので、技術的に大変難しい手術です。手術時間は、約90 分です。                 
 
(3)角膜内皮移植(Descemet's stripping automated endothelial eeratoplasty: DSAEK, non-Descemet's stripping automated endothelial keratoplasty: nDSAEK, Descemet membrane endothelial keratoplasty: DMEK)

 
角膜内皮だけが障害されている場合(水疱性角膜症)に行われ、角膜の内皮層のみを取り替える手術です。ドナー角膜の内皮層のみを空気の圧力で接着させ、角膜を縫合せず手術を終えることができるので、移植後に乱視を増やさないというメリットがあります。従来のPKPと比較して、視力回復が早い、外傷に強いなど多くのメリットがあります。手術時間は、約40分です。極めて薄いドナー内皮を移植する最先端のDMEKも導入しています。                        
 
(4)角膜輪部移植(Keratolimbal allograft: KLAL)

 
角膜上皮細胞の元となる細胞(幹細胞)は、角膜輪部に存在することが分かっています。上皮障害を引き起こす輪部機能不全に陥った場合、ドナー角膜の輪部を移植する方法を行います。同時に羊膜移植などをすることもあります。
 

②角膜感染症

角膜には細菌、真菌(カビ)、ウイルス、原虫(アカントアメーバ)など、様々な病原微生物が感染し、角膜潰瘍から重篤な視力障害が残る場合があり、可能な限り早期の診断と適切な治療が必要です。最近ではコンタクトレンズ関連の角膜細菌感染症(緑膿菌など)で入院される若年者が増加しており、今後も注意が必要です。また、ソフトコンタクトレンズの不適切な使用が原因で起こり、大変に難治性であるアカントアメーバ角膜炎も増加しており、早期診断・早期治療につとめています。さらに、ヘルペスウイルス関連角膜潰瘍で角膜穿孔にまで至る重症例が多く紹介されており、治療的角膜移植などにも迅速に対応しています。診断に際しては、臨床所見の他にグラム染色や眼脂培養を基本としており、ヘルペスウイルスに対するPCRpolymerase chain reaction)を使用した迅速診断も行っております。
 

③ドライアイ

軽症のドライアイの患者様は近くの眼科に逆紹介を行い、重症のドライアイ(シェーグレン症候群やGVHDなど)を中心に治療を行っています。涙点プラグは非常に効果的で、劇的に症状が改善するため、患者様に喜ばれています。プラグの脱落や肉芽形成に対しても、より適切なプラグを選択し、必要であれば涙点閉鎖術を施行しています。また、製薬会社が新しく開発した新薬の治験も行っております。
2022年春より、ドライアイ検査機器「idra(アイドラ)」を導入し、マイボーム腺梗塞によるドライアイに対するIPL(Intense Pulsed Light)治療を始めました(自費診療)。ドライアイ外来の詳細はこちら
 

④遺伝性の角膜疾患(角膜ジストロフィ)

角膜には多くの遺伝性の疾患があり、疾患によっては進行性の視力障害をきたす場合があります。当院では、本学医の倫理委員会よりの承認を得て、角膜ジストロフィの遺伝子診断を行っております。これにより、正確な診断が可能となり、必要に応じてPTK(治療的レーザー角膜切除術)、角膜電気分解、角膜移植術などを施行しております。
 

⑤円錐角膜

円錐角膜は思春期ころより角膜中央部が突出してくる原因不明の病気で、北陸地域にも多くの患者様がおられます。近視や乱視が強くなり、眼鏡にても視力が出なくなるため初めて診断されることが多いようです。進行予防にはハードコンタクトレンズの装用が有効であり、当院においては極力ハードコンタクトレンズで様子をみております。コンタクトレンズの装用可能時間が3時間以下になった場合や、高度に進んだ円錐角膜に対しては角膜移植を行っています。
 

⑥羊膜移植

羊膜は子宮と胎盤の最内層を覆う半透明の薄い膜(約 0.1-0.2mm)で、単層円柱上皮である羊膜上皮とその下の基底膜、さらにコラーゲンに富む実質組織から成り立っています。現在眼科で使用している羊膜は、妊婦から提供された羊膜を、日本組織移植学会認定の組織(羊膜)バンクから入手しています。
羊膜を眼表面に移植することにより、①角結膜上皮化の促進、②正常な角結膜表面の分化の促進、③抗炎症作用、④瘢痕形成の抑制、⑤血管新生抑制などが臨床的に期待できます。羊膜・羊水と接触する胎児の皮膚では scarless wound healing(瘢痕を残さない創傷治癒)が起こることが知られており、この羊膜の持つ強力な生物学的作用が上述するような様々な作用を眼表面にもたらすと考えられています。これらの作用は角膜の透明性を脅かす角膜上皮の遷延性欠損、角結膜の異常な分化(扁平上皮化生)、瘢痕形成、炎症、角膜血管新生などを抑制するという点で誠に都合が良く、羊膜移植は多くの眼表面疾患に対して適応があります。さらに羊膜移植は再発翼状片や瘢痕性角結膜症など、従来は治療が困難であった疾患の治療予後を改善しただけでなく、水疱性角膜症の疼痛抑制や角膜潰瘍・穿孔の閉鎖など、新しい分野にも応用されるようになってきています。羊膜移植術後は審美的に優れていますので、若い女性の翼状片に対する美容目的の紹介も増えており(図 2A,B)、その高い要求に答えられるように頑張らせていただきます。
当院では、 2003年より先進医療として羊膜移植を行ってきましたが、 2014年から羊膜移植術が「保険診療」で行えるようになりました。通算 200例以上の羊膜移植術の実績があり、全例合併症なく成功しております。
 
 
参考文献
(1) 小林 顕、杉山和久 . 眼科領域の羊膜利用とその安全性 . 日本医事新報  No4166, 107-108, 2004.
 
(2) 小林 顕、杉山和久、篠崎尚史 . 難治性眼疾患に対する羊膜移植術 からだの科学増刊号  高度先進医療  日本評論社  p133-p137