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眼腫瘍外来

 
 眼科領域の腫瘍は比較的稀な疾患です。それが悪性腫瘍(がん)でるある場合に、遠隔転移により生死にかかわる問題ともなり、その診断と治療に際しては他科との連携が必須です。一方で、眼領域の腫瘍で決して軽視できないのは、視機能維持の問題、また、容姿、整容上の問題です。当金沢大学病院は、都道府県がん診療連携拠点病院として国の指定うけており、眼科においても眼部腫瘍の症例を治療しています。
 以下、代表的な疾患を列挙します。
 

●網膜芽細胞腫

 小児の代表的な眼球内に生じるがんです。適切な治療を行った場合の5年生存率は90%以上です。罹患側の眼球摘出は治療選択肢のひとつですが、両眼性である場合には少なくとも片眼は温存できることを目指して治療を行います。近年の眼球温存療法の主流は眼動脈を経た抗がん剤メルファランの局所投与であり、本邦では国立がんセンターでその治療が可能であるので、必要に応じて病診連携を行っています。 
 

●ぶどう膜悪性黒色腫(眼内メラノーマ)

成人の代表的な眼内悪性腫瘍です。治療としては眼球摘出(写真:右眼内メラノーマを眼球ごと摘出)あるいは失明を覚悟した強力な放射線治療のいずれかの選択になります。容易に生検できる腫瘍ではないので、臨床診断において良性腫瘍との鑑別は極めて重要です。全身転移しやすいがんであり、眼局所治療後の検査、治療も重要です。
 

●眼内悪性リンパ腫

社会の高齢化に伴って、症例数が増えている疾患です。眼に初発する場合には、しばしば原因不明のぶどう膜炎として治療されている場合があり、仮面症候群とも呼ばれる所以です(写真は本疾患の眼底写真)。しばしば脳に併発し、その場合生命予後は一般に不良です。治療の選択肢には、硝子体切除手術、抗がん剤メトトレキセートの眼内投与、全身化学療法、放射線照射などが挙げられます。

 

※眼内悪性リンパ腫の再発抑制を目的としたブルトンキナーゼ阻害薬の治験について
眼内悪性リンパ腫に対する新しい治療薬(ブルトンキナーゼ阻害薬)の治験を当施設を含む国内の11大学病院で行っています(登録は2024年1月31日までの予定)。
 詳細につきましては、ホームページ「眼内悪性リンパ腫の診断と治療(URL:https://iol.link/)」をご参照ください。

 

●眼付属器リンパ腫

リンパ腫(悪性腫瘍で、いわば、リンパ球のがん)は、国内外のいろいろな統計によると、眼窩腫瘍のなかで最も多いとされています。最も多いのは低悪性度のMALTリンパ腫であり眼窩に限局する場合には放射線照射で完治することもあります。悪性度のより高いびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)の場合にはときに失明し(写真は左眼失明症例)、生命をも脅かすので、早期の診断・治療が望まれます。

 

●IgG4関連涙腺炎、IgG4関連眼疾患

IgG4関連疾患とは、血清IgG4が上昇し、全身の諸臓器にリンパ形質細胞浸潤病変を呈する疾患概念です。眼科領域ではIgG4関連涙腺炎が代表的な病態です。(図は本疾患のMRI:Takahira et al. Arch Ophthalmol 125:1577-, 2007 から引用)。IgG4陽性病変は涙腺以外の眼窩組織にもみられ、視神経症による視力低下をきたす重症例もあります。またIgG4関連眼疾患ではときにリンパ腫を併発するので、その鑑別診断は重要です。
 

●小児・若年者の眼瞼・眼窩腫瘍

眼窩デルモイドは、先天性に小児の眉毛下外側に好発する(写真)良性の嚢胞病変で手術の対象となることが多い疾患です。眼窩骨が圧迫により菲薄化したり、破裂して強い炎症をおこしたりする可能性があるので、当院では早晩の摘出手術を勧めています。他、小児の眼瞼が腫脹する疾患で最も頻度が高いのは霰粒腫であり、自然消退が見込めますが、増大傾向が強い症例では手術による内容掻爬を行うこともあります。

 

●眼瞼の腫瘍

眼瞼の良性腫瘍には、脂漏性角化症、母斑、乳頭腫などがあり、いずれも整容上あるいは機能上の問題があれば、手術の適応となります。眼瞼の癌には、代表的な3つ、すなわち基底細胞癌(写真上段)、脂腺癌(写真中、下段)、扁平上皮癌があります。脂腺癌はしばしば霰粒腫(ものもらい)との鑑別が困難で注意が必要です。治療は手術療法が主体です。瞼が大きく欠損することが多いので、周囲からの伸展皮弁、粘膜移植、保存強膜移植(写真下段)などにより欠損した瞼の再建を行います。