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専門分野の研究紹介

 

緑内障グループ(2)

 ⑦緑内障と眼血流
(1)緑内障における視神経乳頭血流 (佐々木)
 
緑内障においては視神経乳頭血流が低下することが知られています。非侵襲的な血流測定方法としてはLaser Dopplerなどが用いられてきましたが、近年では、より正確性・再現性に優れたLaser Speckle FlowgraphyLSFG)を用いた手法が開発されています。
LSFGでは眼底にダイオード光を照射し、それが赤血球に反射し、反射光が互いに干渉しあい形成されたスペックルパターンの変化率を計測し、血流波形・血流速度・血流量を測定します。血流波形の形状から血流の安定性を示すパラメータや血管抵抗を示すパラメータなど様々なパラメータを算出することができます。

スペックルパターンの変化率が高い部位が暖色系、低い部位が寒色系で示されています。特に血管走行に沿って暖色系の部位が広がっており、血流が多い部位が暖色系で示されていることが分かります。逆に血管が少ない部位は寒色系となっており、血流が少ない部位が寒色系で示されております。

 
緑内障発症・進行の重要な因子として高眼圧が挙げられます。そこで当院では、眼圧変化と眼血流量変化の関係を検討しております。原発開放隅角緑内障患者に対し、緑内障手術(線維柱体切除術)を施行し、眼圧が下降したことで眼血流がどのように変化するかを調べました。視神経乳頭においては、血流量自体は変化しませんでしたが、血流の安定性が改善しておりました( Takeshima S, et al. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2019;60:677-684)。視神経乳頭周囲の血流や黄斑部の血流は、緑内障術後増加しておりました。これらのことから、眼圧下降は眼血流の血行動態にも影響を与えていることが分かりました。今後は、網膜厚や脈絡膜厚など構造の違いが血流量やその変化量に及ぼす影響について調べる方針です。

 
(2) 基礎研究 (和田)
現在、緑内障に対する唯一確立された治療は眼圧下降である。しかし近年緑内障において網膜血流が正常眼と異なることが我が国で開発された非侵襲的な血流測定法であるレーザースペックルフローグラフィ(laser speckle flowgraphy : LSFG) を用いて報告されており、網膜微小循環障害は緑内障の発症及び進行の要因と考えられている。そこで病態解明や治療評価には網膜血流を正しく評価することが必要である。LSFGは、視神経乳頭や網脈絡膜などの循環動態を非侵襲的かつ二次元的に定量化することを可能とした眼底血流測定機器である。当教室では従来から緑内障の眼血流について、臨床的な検討を行って報告してきた。我々は眼圧以外の緑内障発症要因の解明には動物モデルを用いることが有用と考え、LSFGによる臨床研究に加えて、ラット用血流測定機器であるLSFG-Microを用いてラットの眼血流について基礎研究を行ってきた。
そしてラットの視神経乳頭血流は週齢に伴い増加する(19週齢まで)ことを報告(図1)、また緑内障点眼薬における視神経乳頭血流に対する作用(図2)を報告している。

 
          図1 正常ラットにおける視神経乳頭血流の経時的変化 W = 週齢
            20週齢まで経時的にカラースケールが増加している。文献1から改変引用

 

 
          図2 緑内障点眼薬(リパスジル)の連続点眼によるラット視神経乳頭血流の変化
            ラット視神経乳頭血流は点眼1,2週間後で有意に増加した。文献2から改変引用

過去の業績
1) Wada Y, Higashide T, Nagata A, Sugiyama K. Longitudinal Changes in Optic Nerve Head Blood Flow in Normal Rats Evaluated by Laser Speckle Flowgraphy. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2016;57(13):5568-5575.
2) Wada Y, Higashide T, Nagata A, Sugiyama K. Effects of ripasudil, a rho kinase inhibitor, on blood flow in the optic nerve head of normal rats. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2019;257(2):303-311.

 
⑧緑内障眼における角膜ヒステリシスの日内変動についての研究 (岡山)
緑内障の治療において眼圧の測定は非常に大切ですが、眼圧は日内変動があると考えられています。緑内障では日内変動パターンの変化や日内変動幅が大きいことなどの変化も報告されています。また通常の診察時間帯においては眼圧が良好な場合でもそれ以外の時間帯で眼圧上昇をきたしていることもあります。
角膜ヒステリシスとは角膜の生態力学特性(角膜の弾性力)をあらわします。角膜の弾性力がない(角膜が硬い)眼においては緑内障が進行しやすいといわれています。当院ではライカートORA G3を用いて、角膜ヒステリシスを測定することができます。正常眼の角膜ヒステリシスは既報では日内変動を示さないとされています。我々は緑内障眼において角膜ヒステリシスが夜間に上昇する日内変動することを報告しました(第123回日本眼科学会総会)。
角膜ヒステリシスは緑内障の視野進行にかかわる重要な指標として現在注目されています。今後のよりよい緑内障治療のために、我々のグループでは、角膜ヒステリシスの研究を進めています。
 
⑨原発性アルドステロン症研究 (阪口、大嶋)
■基礎研究
原発性アルドステロン症は、本邦における高血圧患者のおよそ1割(200~400万人程度)を占め、多臓器に影響を及ぼす疾患として知られますが、現時点で緑内障との関連は明らかではありません。アルドステロンを持続投与したラットにおいて、眼圧は変化せずに網膜神経節細胞の減少が生じるという報告があり、眼圧に依存しない緑内障との関連が想起されます。当教室では、前述の報告を行った研究グループと共同で、アルドステロン持続投与ラットにおける網膜変化の検討を行っております。我々は、網膜神経節細胞減少の一因として眼底血流に着目しました。近年開発された、眼底血流を非侵襲的に測定できる機器「レーザースペックルフローグラフィ」を用いてラットの網膜血流を測定し、次いで逆行性染色により網膜神経節細胞密度を測定しました。結果、アルドステロンを投与されたラットで網膜血流低下が生じ、網膜神経節細胞密度の減少と相関を認めました。この内容を第29回日本緑内障学会で報告しました。
 
■臨床研究
前述の基礎研究は動物(ラット)に関する結果で、実臨床(ヒト)において原発性アルドステロン症の眼底所見の特徴や緑内障との関連は明らかになっておりません。我々は当院内科と共同で、原発性アルドステロン症患者における眼底変化の特徴や緑内障性変化との相違の研究を行っております。これまでに、原発性アルドステロン症患者の眼底写真と緑内障検診受診者の眼底写真の比較を行い、その特徴的な眼底所見につき第122回日本眼科学会で報告しました。現在は、さらに詳細な究明を行うため、原発性アルドステロン症の精査目的で代謝内科に検査入院となった方のご協力を得て、眼底検査、視野検査、光干渉断層計(OCT)、光干渉断層血管撮影(OCT Angiography)、レーザースペックルフローグラフィなど各種検査を行い、原発性アルドステロン症眼の機能的構造的特徴について正常眼および緑内障眼と比較検討を行っております。
原発性アルドステロン症患者の眼底の特徴と緑内障との関連について明らかにするため、今後さらに検討を深めて参ります。
 
⑩緑内障眼合併黄斑疾患に対する硝子体術後の視野変化の検討 (土屋)
緑内障合併の硝子体黄斑疾患(網膜前膜、黄斑円孔)に対して硝子体手術が視野に及ぼす影響を検討しています。まず24-2ハンフリー視野計を用いて、中心10度内の視野と、周辺視野に分けて、緑内障眼と非緑内障眼で術後の視野感度変化を検討したところ、術後の視力改善などは有意差はありませんでしたが、中心10度内の視野が、緑内障眼において有意に悪化してしまうことがわかりました。(Tsuchiya S et al. PloS One 2017) さらに10-2視野を用いて、術後12ヶ月までの経過を、網膜前膜に対して硝子体手術を行われた眼に関して検討すると、術後10-2MDおよびPSDは緑内障眼にて有意に悪化し、セクター別の検討では上下方外側弓状領域および上方内側弓状領域が特に視野感度が悪化することがわかりました。その悪化に関連する因子としては術前のTD値や年齢、そして術前のGCC厚などが挙げられます。この悪化の主な原因としてはILM peelingが寄与しているのではないかと予想されますが、今後さらなる検討が必要です。
 
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