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専門分野の研究紹介

 

緑内障グループ(3)

 2.治療、手術

 
①正常眼圧緑内障に対する第一選択治療としてのSLT(多施設共同研究)(新田)
正常眼圧緑内障に SLTを第一選択治療あるいは第二選択治療として施行した場合の、眼圧下降効果・有害事象などに関する研究を行うために、医師主導の多施設研究の研究代表者として本研究を企画し前向き介入研究として承認され、 2020.1~エントリーを開始予定。
 
②専門分野の研究紹介(MPCPCの術後成績)(輪島)
緑内障は、加齢により増加する疾患であり、現在の日本での失明原因の第一位を占めてい る。末期の緑内障の患者には選択できる治療も限られてくるが、近年マイクロパルス毛様体 光凝固 (micropulse cyclophotocoagulation : MPCPC)といった選択肢が増える治療法が考案された。 MPCPC2017年度から日本で認可され、当院でも 2018年の 2月から取り入れており、施術の容易さと合併症の少なさに加えて、眼圧を下降させる期待も高く、現在当院では眼圧を下げる一つの大きな方法として利用している。依然日本での報告が少ないので本研究では多数例の眼圧経過や合併症を報告することが目標である。

 
使用する器具は Cycle G6P3 Glaucoma Device .IRIDEX社、 CA,USA)を使用する。 検討していく項目は多岐にわたり、視力眼圧などの眼科の基本的な検査項目はもちろんのこと、眼軸長や角膜内皮細胞数、緑内障点眼数の増減などを検討していく。 MPCPCの魅力は短時間で施行可能、技術的に容易、合併症が少ないことである。今後の長期成績の結果によっては緑内障治療の代表的な治療法となりうる可能性がある。
 
③緑内障手術(線維柱帯切除術)についての研究(満保)
緑内障の外科的治療には現在様々な方法がありますが、濾過手術 (眼内の房水と呼ばれる水の流出路を新たに作成する手術 )とりわけ「線維柱帯切除術」は長い歴史があり、世界のスタンダードな手術となっています。濾過手術では結膜の下にある強膜と呼ばれる組織にフラップ ()を作成し、その強膜弁を通して房水を流出させ「濾過胞」と呼ばれる袋を結膜下に形成することで眼圧を下降させます。この濾過胞の維持・管理が術後の成績を左右する重要な因子となっています。特に濾過胞感染と呼ばれる濾過胞に関連した感染症は重篤な合併症として重要です。線維柱帯切除術にはいくつかの手術方法があり、代表的なものとして切開の位置によって輪部基底切開法と円蓋部基底切開法の 2つにわけられます。これまで輪部基底切開と円蓋部基底切開の手術方法の違いにより術後の濾過胞形態や濾過胞感染に対して様々な影響が報告されてきました。さらに円蓋部基底切開ではテノン嚢と呼ばれる結合組織の処理にバリエーションが存在し、当院では 2008年ごろよりテノン嚢を濾過胞の裏側に裏打ちするテノン前転法を行ってきました。これは濾過法漏れなどの合併症を防ぐ目的で行われています。我々は輪部基底切開、円蓋部基底切開テノン前転なし、円蓋部基底切開テノン前転ありの 3群間で濾過胞感染率について比較検討し、テノン前転法を行った円蓋部基底切開は他の方法と比べて濾過胞感染のリスクを低下させることを報告しました (123回日本眼科学会総会 )。現在はアルコン社のエクスプレス™( Express Glaucoma Filtration Device)という名称のチューブのインプラントを併用した線維柱帯切除術において、前眼部光干渉断層計と呼ばれる画像機器を用いて、強膜弁と濾過胞の形状、チューブの位置関係などを解析し眼圧など治療効果との関係の研究を進めています。長期的な濾過胞生存率に影響する因子も検討し、よりよい緑内障手術成績を目指しています。
 

3.多施設共同研究

当科の緑内障部門では、多数の多施設共同研究に参加しております。
 
①日本緑内障学会データ解析委員会事業
PreGlassPREperimetric Glaucoma and glaucoma Suspect Study
 20184月に日本緑内障学会データ解析委員会事業に認定されている研究です。
全国の緑内障専門医が所属する施設と協力して行っている前向き多施設共同研究で、
金沢大学眼科が事務局を担当しています。
 
【研究の概要】
 この研究は、前視野緑内障 (視野障害がない段階の緑内障)と緑内障疑いの方、早期の緑内障の方を対象とした研究です。
緑内障疑いや前視野緑内障以前の段階ではどのような状態であるか、どのような緑内障疑いの眼や前視野緑内障が緑内障になりやすいか?ということは、まだ明確にはわかっていません。
そのため、緑内障になりやすい眼の特徴や、緑内障の進行の程度が速い眼、進行しやすい眼の特徴などを明らかにして、今後の診療や治療方針などに生かしたいと思っています。
わずかな眼の変化や視野の変化を逃さないために、3か月ごとに5年間前向きに視野と画像(OCTと眼底写真など)を測定して、詳細な経過観察を行っています。
 
②緑内障患者の視野障害および両眼視機能とQuality of Lifeの関連
UMIN番号: UMIN000022685
共同研究施設:たじみ岩瀬眼科 
【研究の概要】
 眼科の検査の多くは、「片眼ずつ」の検査で、視力検査の時は「最高矯正視力」を測定しようと日々、奮闘しています。しかしながら、患者さんは最高矯正視力を日常で発揮できているとは限りません。緑内障では視野進行が進むと、両眼視機能が低下し、融像しにくくなり、複視が出現する(眼位異常が出現して)患者さんがいらっしゃいます。また、視力や視野はあまり変化がないけれど、とても見えにくくなったなどの訴えがある患者さんには、両眼視機能の検査や両眼開放での視野検査を行って、「日常の見え方」を考え、評価しています。
 
③視細胞と網膜神経節細胞の位置ずれを考慮したOCT対応視野による前視野緑内障の評価
(UMIN番号:UMIN000031483)
共同研究施設:おおくぼ眼科クリニック、たじみ岩瀬眼科
【研究の概要】
 前視野緑内障用に配置した検査点を用いたOCT対応視野計で、OCTによる構造変化がある部位に対応して、感度低下があるかどうかを調べる研究です。特徴的なのは、視細胞と網膜神経節細胞の位置ずれを考慮している検査点配置であることです。現在、データを収集中で、正常眼と前視野緑内障の比較検討をおこなっています。
 
④次世代眼科医療を目指す、ICT/人工知能を活用した画像等データベースの基盤構築 プロジェクト1(眼底写真の診断)
【研究の概要】
 日本眼科学会が主導して、全国の基幹病院から画像データならびに基本的な診療データを広く集める体制事業の一環の研究に参加しています。人工知能(AI)を使った眼疾患の診断能力についてはこれまでまとまった研究がなく,詳しくわかっていませんでした。この研究は、人工知能(AI)を用いて、眼底写真から自動的に眼科の疾患の診断支援を行うプログラムを作成することを目的としています。
 
⑤緑内障眼、強度近視眼、強度近視緑内障の診断に関する人工知能研究
共同研究施設:いくの眼科、おおくぼ眼科クリニック、福井県済生会病院、ツカザキ病院
【研究の概要】
 この研究は、眼底写真や光干渉断層計で撮影した画像から、正常眼、緑内障眼、強度近視眼といった診断名や疾患の進行度を提示する人工知能(AI)プログラムを作成することを目的としています。当院を含む5施設から眼底写真、光干渉断層計で撮影した画像を収集しています
 
⑥TramTrac Study(Trabectomeに対する、Microhookを用いた線維柱帯切開術眼内法の眼圧下降効果と安全性の非劣性を検討する多施設共同ランダム化介入臨床研究)
【研究の概要】
20184月から開始された神戸大学を主たる施設とした臨床試験であり、現在当科を含めた国内11施設が参加しており150例が目標症例です。
本試験も日本緑内障学会のデータ解析事業に認定されています。1剤以上の緑内障点眼薬を使用しても、眼圧が21mmHg以上の高眼圧症、原発開放隅角緑内障、落屑症候群、落屑緑内障患者(ハンフリー242または302視野でMD値が-12dBより視野障害が軽度)に対して、TrabectomeまたはMicrohookを用いた線維柱帯切開術を単独あるいは白内障手術と同時に施行し、両術式による1年間の術後経過を比較するものです。