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専門分野の研究紹介


 

網膜硝子体グループ

 
① 網膜剥離術後の変視量と網膜外層構造の変化について(奥田)
黄斑剥離を伴った網膜剥離では、手術後に変視を訴える患者様が多くいますが、そのメカニズムはまだよくわかっていません。我々は黄斑剥離を伴う網膜剥離術後の変視量と網膜外層構造の変化について研究を行いました。それにより、視力は網膜外層の視細胞内節外節接合部であるellipsoid zoneが回復していれば、錐体外節先端であるinterdigitation zoneが回復していなくても有意に改善が見られました。しかし変視はellipsoid zone 、interdigitation zoneの両者が回復することにより有意に改善するという結果が得られました。この結果はRETINAに掲載されました。
METAMORPHOPSIA AND OUTER RETINAL MORPHOLOGIC CHANGES AFTER SUCCESSFUL VITRECTOMY SURGERY FOR MACULA-OFF RHEGMATOGENOUS RETINAL DETACHMENT. Okuda T, Higashide T, Sugiyama K. Retina. 2018 Jan;38(1):148-154.
 
②内境界膜翻転法を用いた黄斑円孔網膜剥離術後の黄斑円孔閉鎖のプロセスについて(奥田)   
2010年にMichalewskaらにより円孔径400μm以上の大型の黄斑円孔に対する内境界膜翻転法を併用した硝子体手術が報告され、その後強度近視眼に併発する黄斑円孔網膜剥離にも本法が用いられるようになりました。従来黄斑円孔網膜剥離では内境界膜を広範囲に剥離除去し、術後は網膜が復位したのちに円孔閉鎖が得られました。しかし当院及び大阪大学附属病院にて黄斑円孔網膜剥離に対し内境界膜翻転法を行った症例の中で、網膜下液が残存した状態で円孔閉鎖が得られた症例を3例認めました(図5)。これらの症例では術中に網膜下液の排除は行っておらず、網膜復位に先立ち翻転され円孔間を架橋した内境界膜により円孔閉鎖が開始しています。その後架橋した内境界膜の直下からグリアと思われる細胞の増殖により網膜内層の閉鎖が完成し、徐々に網膜下液が消失して網膜復位を得ました(図5)。Michalewskaらは大型黄斑円孔の閉鎖において、翻転した内境界膜がグリア細胞の増殖の足場となり、円孔内が増殖した細胞で満たされ円孔閉鎖を促している可能性があると推察していますが、我々の経験したMHRDの円孔閉鎖過程とまさに一致しており、彼らの仮説を支持している可能性が示唆される。また黄斑円孔閉鎖のプロセスそのものが、必ずしも網膜復位により惹起されるものではないという可能性が考えられ、その結果を下記のように報告しました。
MACULAR HOLE CLOSURE OVER RESIDUAL SUBRETINAL FLUID BY AN INVERTED INTERNAL LIMITING MEMBRANE FLAP TECHNIQUE IN PATIENTS WITH MACULAR HOLE RETINAL DETACHMENT IN HIGH MYOPIA.
Okuda T, Higashide T, Kobayashi K, Ikuno Y, Sugiyama K.
Retin Cases Brief Rep. 2016 Spring;10(2):140-4.
 

③黄斑疾患による視機能障害と緑内障(東出)
 網膜硝子体疾患の中での黄斑疾患の代表は黄斑上膜、黄斑円孔ですが、硝子体手術の進歩によりMIVS(minimally invasive vitreous surgery)の手術手技が確立され、術後の視力改善が高い確率で得られるようになりました。しかし、視機能障害を表す指標は視力だけではなく、視野や変視、不等像視などの評価も必要です。たとえ視力が改善してもこれらの検査に異常があれば満足な視機能と言えない場合もあります。そこで当科ではこれらの検査を術前後に経時的に前向きに行い検討してきました。
 片眼性黄斑上膜の術後視機能について、術後視力については従来から多数の報告があり、変視と不等像視(黄斑上膜では通常患眼の方が大きくみえる)についてもそれぞれ報告があります。黄斑上膜では術後視力は改善しますが、あまり患者満足度が高いとはいえません。その理由として、変視や不当像視が術後に残存することが挙げられます。この特徴を術前に説明し理解してもらわないと、術後に不満を訴えられることがあります。われわれは術後1年間の視力、変視、不等像視の経過の相互関係を同一症例において初めて比較検討しました。その結果、視力と水平方向の変視は術後6か月で有意に改善するものの垂直方向の変視は改善しないこと、不等像視は術後1年で初めて改善すること、術後変視には術前のellipsoid zone欠損、術後不等像視には術前水平変視量が関連することが明らかとなりました(Takabatake M, Higashide T, Udagawa S, Sugiyama K. POSTOPERATIVE CHANGES AND PROGNOSTIC FACTORS OF VISUAL ACUITY, METAMORPHOPSIA, AND ANISEIKONIA AFTER VITRECTOMY FOR EPIRETINAL MEMBRANE. Retina. 2018 Nov;38(11):2118-2127) 。
当科では緑内障症例が多く、黄斑疾患の症例でも緑内障合併例が紹介されることが少なくありません。そこで、黄斑疾患(黄斑上膜、黄斑円孔)の硝子体手術の術後視機能とそれに対する緑内障の影響を検討しています。これらの疾患では硝子体手術時に黄斑部の内境界膜剥離を行うのが標準の手術手技となっています。そこで、内境界膜剥離併用硝子体手術後の視野変化を調べ、緑内障の合併の有無に関して比較検討しました。その結果、緑内障を合併していない場合には視野の悪化はみられませんでしたが、緑内障眼ではハンフリー24-2視野の中心10度内が術後約10か月の経過で悪化することが明らかとなりましました(Tsuchiya S, Higashide T, Sugiyama K. Visual field changes after vitrectomy with internal limiting membrane peeling for epiretinal membrane or macular hole in glaucomatous eyes. PLoS One. 2017;12(5):e0177526)。特に術前にすでに視野の悪い進行した緑内障症例では術後に中心視野が悪化しやすく、手術適応を決める際に注意が必要です。さらに、中心視野変化の詳細な検討やより長期での経過について検討を試みております。